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2010年に上演した作品

2010年1月例会 幹の会+リリック『冬のライオン』 作/ジェイムズ・ゴールドマン 訳/小田島雄志 演出/高瀬久男(文学座)
出演/平幹二朗、 麻実れい、 廣田高志、城全能成、高橋礼恵、小林十市、三浦浩一

2月2日(火)6時30分
  3日(水)6時30分
  4日(木)1時30分

中京大学文化市民会館プルニエホール(名古屋市民会館中ホール)

 1183年のクリスマス。イングランド国王ヘンリーは、自分への反乱か絶えない家族や、領土を巡るフランス王との長年の争いを解決するため、軟禁中の后エレノア、息子のリチャード、ジェフリー、フランス王のフィリップをシノン城に呼び集めた。これに、ヘンリーの愛する末子のジョンと、愛人のフランス王女アリースが絡んで、さまざまな駆け引きが繰り広げられる中、崩壊した家庭の人間模様が改めて浮き彫りにされてゆく。息子たちの相変わらずの裏切りに愛想が尽きたヘンリーは、かれらを幽閉し、エレノアとの結婚を無効として、アリースと結婚して新たな子を得ようと、ロ-マの教皇のもとへ赴こうとするが‥・

 歴史劇として大きな評価を得ている作品。登場人物はすべて歴史上の実在の人物であり、背景も史実に基づいている。登場人物の性格や彼らに関する逸話は、史実というよりも、むしろ英米で広く一般に知られている伝説的な人物像をもとに描かれている。これまで1981年に山崎努、岸田今日子(演劇集団円)、1997年に栗原小巻、池田勝(劇団俳優座)で上演されている。平幹二朗と麻実れいの組み合わせは大いに期待が持てる。正攻法の歴史劇に期待する。夫、妻、兄弟、親子の葛藤の中に現れる人間と向き合いたい。
2010年3月例会 こまつ座『シャンハイムーン』 作/井上ひさし 演出/丹野郁弓
出演/村井国夫、有森也実、 小嶋尚樹、梨本謙次郎、増子倭文江、土屋良太
3月17日(水)6時30分
  18日(木)1時30分・6時30分
中京大学文化市民会館プルニエホール(名古屋市民会館中ホール)

 1934年、上海。
 商業、工業、金融業で栄える極東最大の国際都市。「東洋のパリ」ともまた「魔都」とも呼ばれ、百花綜乱の文化の華が咲き乱れる歓楽の都。しかし、ときの国民党政府は大間題をいくつもかかえていた。国内には共産軍のはげしい抵抗があり、国外からは欧米の列強か迫り、そして二年前には上海事変が勃発、隣国日本が軍靴の音を轟かせて一気に押し寄せる。街には「抗日」「排日」の声が溢れ、シャンハイは混迷を極めていた。
シャンハイムーン 周樹人は日本に留学し仙台医学専門学校で医学を学んでいた。しかしある事件をきっかけに彼は医学を捨て、文学を志すことになる。「魯迅」という名で革新的な小説、随筆、論文を次つぎに発表した彼は、たちまち熱狂的な読者を獲得し、愛読者の数は増え続けた。いまやノーベル賞の候補にも挙げられるほどの文名高い知識人として世にあまねく知られる魯迅。しかし国民党政府は、そんな魯迅の言動に眉をひそめ、魯迅の筆に圧力を加えようとさまざまな弾圧をくりかえしていた。そのためこのシャンハイの世界的な文学者は、もう何年もの間、避難行の地下生活をしいられていた。
 魯迅の第二夫人許広平(きょ・こうへい)は、魯迅のかつての教え子でもある。無理がたたって体のいたるところを「病」におかされている夫の命を守り、夫の健康を取り戻したいと願う広平は、信頼を寄せる内山完造、みき夫妻に相談を持ちかけ、魯迅は北四川路の「内山書店」にかくまわれることとなった。完造の招きで須藤医師と奥田歯科医のふたりの医師もこの内山書店にやってくる……が、ここに大間題が立ちはだかった。魯迅は断固として診療を拒否し、医師たちを一切近づけようとしないのだ。「かつては医学を志したこともある魯迅先生が、なぜ?」。須藤は、魯迅の不整脈や内臓疾患やひどい虫歯より も、心の奥底にひそむ「病」をこそ取り除かねばならないと、そう考えるのだが……。
 魯迅がみまわれる「人物誤認症」そして「失語症」の、言語を絶する爆笑シーン。そして魯迅の心の葛藤を通して、やがて浮かび上がってくる感動的な人生のドラマ。 第27回谷崎潤一郎賞に輝いた傑作戯曲。
2010年4月例会 海流座『新・裸の大将放浪記』 原作/山下清  作/藤本義一  脚本/米倉斉加年 脚色/芦屋小雁  演出/米倉斉加年
出演/芦屋小雁、米倉斉加年、おりも政夫、西崎緑、ほか

4月8日(木)6時30分
  9日(金)1時30分・6時30分

中京大学文化市民会館プルニエホール(名古屋市民会館中ホール)

 この作品は故芦屋雁之助さんの当たり役である山下清の物語として広く知られている名舞台です。それを米倉斉加年の進言により、弟であり常に共にあった芦屋小雁さんが現代喜劇の当たり狂言として兄の遺産を受け継ぐものです。質の良い笑いと楽しい面白いということにとどまらず、鋭い今日性をえぐり出します。
 それは山下清という人物が平和を象徴しているからです。その人間像に照らされて戦争の本質が浮き彫りにされてくるのです。それは奥深くかくされているのですが………。
 無欲で功名心なく、純真で優しく人のためにつくす清が、放浪の旅先の町で心温まるエピソードを繰り広げます。

 ときは、太平洋戦争下、山下清(芦屋小雁)は放浪の旅に出た。昼は一日中歩きまわり、夜は神社や駅のベンチで眠った。
 ある田舎町、清に事件が起こった。巡査に尋問されるが要領を得ない清。盲目の少女とその雇い主の軍国食堂のおかみさんと主人()に助けられ、清は軍国食堂で働くことになる。
 ある日、八幡学園の馬宮園長が軍国食堂にやって来た。学園から姿を消した清を探し歩いていたという。清には、どうしても受けなくてはならない徴兵検査が待っていたのだ。
 やがて戦争が終わり平和な時代がやって来た。画家としての才能をますます開花させる清。なぞの老人との出会い…  「放浪の天才画家」「日本のゴッホ」と賞賛され、清の自由奔放な放浪生活も終わりをむかえていた。自由を愛し、自然を愛した清には、画伯の称号は重たいものだった。
2010年5月例会 エイコーン『令嬢ジュリー』 作/ストリンドベリ
訳・演出/加来英治
出演/栗原小巻、清水 糸宏 治、木村万里
5月19日(水)7時
  20日(木)1時30分・7時

中京大学文化市民会館プルニエホール(名古屋市民会館中ホール)

 19世紀末、白夜の国、スウェーデン。真夏の祭りの夜、伯爵家の台所。
 踊りつかれた下男ジャンが、許嫁の台所女クリスティンの立ち働くキッチンへ、胸元に汗を滴らせながら、走り込んでくる。「令嬢ジュリーは、気が変になっちまった。森番なんかと踊ったりして、この俺にまで、レディ・ワルツのご所望だ」
 令嬢ジュリーは、二週間前に婚約を破棄。それからというもの、神経が昂ぶり、また時には、考え込むように沈黙し、そして、踊り狂う。
 ジャンが、クリスティンの料理に舌鼓を打ち、伯爵のワインを盗み呑む、その時、ジュリーが登場する。
 「ジャン、今度は、スコッチダンスを踊るわ。今日はお祭り、身分なんか忘れるの。」
 踊り終え、二人はキッチンへ戻る。
  狂おしい白夜。ジャンは、令嬢ジュリーに、思いを寄せた幼な心を告白する。「愛のために、眠りにつくことも、出来ませんでした。」
 ジュリーは、ジャンの告白に、心打たれる。
 「私、いつもこんな夢を見るの。高いところから、ずっとずっと下の方へ落ちていく。」
 二人の心はいつしか一つに溶けあう。
 現実に生きるジャンと、夢を彷徨う令嬢ジュリー。二人の愛の行き着くところ悲劇の結末が待っていることを、その時二人は、未だ知らない。
 朝、教会の鐘が鳴りひびく中、ジュリーは霧の中へ旅立つ。
2010年7月例会 劇団前進座『五重塔』 原作/幸田露伴 脚色/津上忠
演出/鈴木龍男
出演/嵐圭史、藤川矢之輔、中村鶴蔵、浜名実貴、小林祥子、武井茂、山崎辰三郎、前園恵子、益城宏、姉川新之輔、柳生啓介、松涛喜八郎、上沢美咲、中嶋宏幸、黒河内雅子、又野佐紋、亀井栄克、石田聡、生島喜五郎、上滝啓太郎、藤井偉策、新村宗二郎、針谷理繪子、木村祐樹、平澤愛、ほか

7月14日(水)6時30分
  15日(木)1時30分・6時30分

中京大学文化市民会館プルニエホール(名古屋市民会館中ホール)

「五重塔は、百年に一度、一生に一度、めったに建つものではございません。死んでも名を残しとうございます。」
 腕は立つが世渡りが苦手、周りからは“のっそり”とあだ名される渡り大工の十兵衛。そんな彼が、江戸は谷中の感応寺の五重塔建立をぜひ自分の手でと、朗円上人に願い出たのは、何としても一生に一度の大工事を手がけたい、己の考えた新しい工法を試してみたいという職人の本能からくる欲得抜きの切実な思いからでした。しかしその仕事は名うての棟梁・川越の源太が請け負うことが決まっており、また十兵衛は源太に世話になっている身だったのです。面白くないのは源太の妻お吉と子方の大工・清吉。恩ある親方を裏切ったと不満を隠せません。源太もはじめは激怒しますが、自らの職人としての意地との葛藤で悩みながらも仕事を譲る決心をします。五重塔建立の行方は………。

 本作品は幸田露伴原作の小説「五重塔」を舞台化したものです。
 1965年に中村翫右衛門、河原崎長十郎らによって初演され、700回以上にわたって上演を重ねてきた前進座の代表作のひとつです。職人の意地、きっぷのよさ、友情と信頼、それを見守る老上人の気高さ、周囲の人間の困惑。五重塔建立という大事業の中織り成される人間ドラマです。
2010年9月例会 青年劇場『族譜』 原作/梶山季之 脚本・演出/ジェームス三木
出演/吉村直、青木力弥、佐藤尚子、葛西和雄、船津基、上甲まち子、武智香織、岡本有紀、八代名菜子、杉本光弘、中谷源、広戸聡

9月21日(水)6時30分
   22日(木)1時30分・6時30分
中京大学文化市民会館プルニエホール(名古屋市民会館中ホール)

 昭和15年、朝鮮京畿道水原郡。日中戦争は拡大し、物資も人間も不足してきた日本政府は、本格的に朝鮮人を戦線に駆り出させるための政策の一つとして、朝鮮名を日本名に変えさせる「創氏改名」政策を打ち出した。徴兵逃れで総督府に勤務した画家志望の日本人青年・谷六郎は、改名を拒む大地主・薜鎮永(ソルヂニョン)の説得を命じられ、彼の邸宅に赴く。薜は親日家として知られていたが、谷の懸命な説得にも改名には頑として応じない。困惑する谷に、薜は700年にわたって受け継がれてきたという“族譜”(一族の歴史が記されている家系図)を見せ、当主の責任として名前を変えることはできない、と語る。族譜を目の当たりにした谷はそこに記された壮大な歴史と崇高な文化に圧倒される。薜の苗字を何とか残すべく策を弄する谷だったが、総督府は薜の娘の婚約者を逮捕・拷問するなど身辺への圧力をかけ始める。「名前」と家族を守るため薜が選んだ選択とは・・
2010年11月例会 京楽座『中西和久のエノケン』 作・演出/ジェームス三木
出演/中西和久、海浩気、井上思麻、まるのめぐみ、ズッカーマン明子、間宮知子、浅見真人、坂口アミ、宮原沙樹、大谷由梨佳、西山丈也。
11月17日(水)7時
   18日(木)7時
   19日(金)1時30分・

中京大学文化市民会館プルニエホール(名古屋市民会館中ホール)

 戦前・戦中・戦後を、大衆と共に常に喜劇王であり続けたエノケンの真摯な芸への生き様を通して、時代の閉息感にあえぐ現代の人々に、明日を生きる活力となるための大いなる笑いを供したい。
 ジェームス三木による書き下ろし。骨太でありながらユニークなお芝居と往年のジャズナンバーを、出演者の生演奏で贈る音楽劇です。
 ひとり芝居『説経節・三部作 しのだづま考 山椒大夫考 をぐり考』コンサートドラマ『ピアノのはなし』で独自の劇世界を創造している中西和久が、歌のうまさ身の軽さで定評のあった榎本健一に扮し、懐かしいメロディにのせて歌やダンス・タップ等を披露します。
 若い世代には新鮮に、往年の観客には懐かしい曲の数々をドラマチックにお届けします。浅草の人気歌劇団のコーラスボーイに採用された榎本健一は、たちまち頭角をあらわしたのも束の間、関東大震災によって活躍の場を失う。
 地方巡業をするも客は来ず、仲間とコントを上演しながら復興した東京・浅草に戻り、カジノ・フォーリー、ピエル・ブリアントを結成し、黄金時代を築く。戦前・戦後の庶民のささやかな心の安らぎとなったのである。だが、エノケン一座の絶頂期に思わぬ病に倒れ、再起をかけた復帰後にもまた、病魔が襲い、片足を失ってしまう。持ち前の粘り強さで、再び、大衆に愛されながら、晩年まで舞台に立ち続けた喜劇王の物語。